環境学習Vol.10「比叡山の自然を巡る」 |
更新日:
2015年9月8日
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龍谷大学名誉教授 江南和幸氏をお招きして「比叡山の自然を巡る」を伺いしました。江南氏は工学博士でありながら、比叡山をはじめとする滋賀の里山、丘陵、山地の植物探索を行い、現在の専門は、「里山学」、「文化財科学」(中国・日本・朝鮮の古文書・仏教経典の用紙分析)とのことで幅広くご活躍されておられます。
以下は、江南先生の「2001年比叡山植物散策」から抜粋
滋賀県と京都府との境に位置する比叡山は、日本仏教の初めの山として、信仰を集めているが、自然環境からみても、大変興味ある地域である。
西から中国山脈が途切れ、東からの飛騨・白山からつながる山脈が途切れ、琵琶湖が大きく広がるところに位置する滋賀県は、南西からの温和な瀬戸内海気候と日本海から吹き付ける厳しい日本海気候とぶつかる、日本列島の中でも珍しいところである。そのため、比良山、赤坂山伊吹山を始め、滋賀県には沢山の山野草・高山植物の名所がある。
比叡山一帯は、瀬戸内海気候の地域に属しながら、山頂付近は冬には30pの積雪をこうむり、日本海気候の姿も見せる。このため、すっかり緑を失われた大阪や開発の進む京都から、わずか1時間足らずの近郊であるが、大変変化に富んだ植物相を特徴とする、得がたい自然の宝庫でもある。
1960年代の初めに京都大学の北村四郎教授(当時)が中心になり進められた比叡山総合調査の「比叡山の植物」(比叡山:京都新聞社刊)を見ると、比叡山一帯には、およそ3700種類に及ぶ日本の顕花植物のうち、双子葉種663種、単子葉種231種、裸子植物6種が数えられるという。これにさらにシダ植物122種が加わると、植物の種類が日本よりはるかに少ないヨーロッパの国々(およそ1200種類程度といわれている)の全植物数に匹敵する植物が、比叡山一帯から周辺の里山に育成することになる。
当時の調査が主として京都側を中心に行われたためか、同書では滋賀県側の植物の調査がやや手薄である。琵琶湖に向かって落ちる、いく筋かの尾根と谷には北村本未記載の植物や、京都側ではないすでに見られなくなった植物も生育し、見飽きることがない。
江南先生、比叡山の自然環境についてお話いただき大変勉強になりました。この恵まれた大津の自然を大切にしたいと思います。ありがとうございました。
お食事は、鯖寿司と土瓶蒸しを頂きました。松茸の香り高く秋の夜長を楽しみました。 |
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