市長ミーティングB
更新日: 2017年8月22日
戦後大きな生活様式の変化とともに、エネルギー資源は薪から石油へと、建材は木や土から鉄やコンクリートへと移行し、自然への負荷と自然の自己修復性のバランスが崩れ自然環境が悪化し始めました。山の環境においては、材木の需要が減って林業が衰退し、倒木の放置や雑木林が減少して生態系のバランスが崩れたり獣害が増えるなど、山の影響は顕著に表れています。

稲作においても環境は大きく変わりつつあります。湖西に多く見られた山の斜面に広がる美しい棚田は、先人の知恵が生んだすばらしい稲作環境でした。棚田の広い畔(のり面)には、アマゾンより多くの生物が生息すると聞きます。棚田の斜面にそった曲線は機械が自由に動けない、手間のかかる田んぼですから、生産コストは非常に高く生産性が低くなります。次世代は低収益の稲作を職として選択しなくなるため、担い手不足や近年の米価低落により稲作をやめたり作業を委託する農家が増えています。

次は水辺です。農業の生産性向上を目的として実施されてきた圃場(ほじょう)整備により、田んぼと水路に段差ができてしまい、以前は田んぼ一帯を自由に行き来していた魚たちの住みかが限られてしまいました。特に、琵琶湖周辺の田んぼは、ニゴロブナなどの産卵場所として大切な役割を果たしていましたが、魚が湖から水路へ、水路から田んぼへ入れない状態が増えています。

「三方によい葭(ヨシ)」といわれるヨシは、三つの大きな自然浄化(水・土・空気)の役割を果たしています。まず、水の中に含まれる主な窒素とリンを吸収します。二つ目は、川や水路が運んできた土砂の中に含まれる農薬・科学物質などを浄化します。三つ目は、ヨシが生育するときに空気中の二酸化炭素を吸収するのです。また魚類の産卵場や稚魚の育成場としての役割も兼ねております。安易で無秩序な干拓・埋め立てや護岸工事は、これらの役割を壊しているのです。

このように16回にわたり琵琶湖と琵琶湖を取り巻く自然環境や生物多様性についての勉強会を開催し、見識を深めてから、最初にわれわれが着手したのが、身近にある里山環境の再生と琵琶湖・河川の環境保全として、セタシジミの放流でした。

continued to C

←前 次→